神話の時代(5) 邇邇芸命(ニニギノミコト)

天孫降臨(てんそんこうりん)

 タケミカズチは高天原にかえり、葦原の中つ国(あしわらのなかつくに=日本)をおさめてきたことを報告しました。そこで、アマテラスは子の天忍穂耳命(アメノオシホミミノミコト)を支配者として遣わそうとします。しかし、その身支度の最中に、邇邇芸命(ニニギノミコト)という子が生まれ、その子を地上に下ろすこととします。

 アマテラスは孫のニニギノミコトに、八尺の勾玉(やさかのまがだま)と、八咫の鏡(やたのかがみ)と草薙の剣(くさなぎのつるぎ)を持たせました。そして、「この鏡こそは私の魂として、私自身をまつるように、心身をきよらかにし、大切にしなさい」といいました。これら三つは三種の神器といわれ、後に天皇家の宝物となります。また、様々な技術をもつ神も、つきしたがうこととなります。

 こうしてニニギノミコト一行は、天上に広がる雲をおしのけながら天を下り、太陽に輝く日向(ひゅうが:宮崎県)の高千穂の峰に降り立ったのです。ニニギノミコトは「ここは朝日や夕日がさす、まことによい土地だ。」といい、ここに立派な宮殿をたてました。

 つき従った神々の中で、天宇受売命(アメノウズメノミコト)は、あらゆる魚を集めて「お前たちは、天の神の子孫にお仕えするか。」と尋ねました。魚達は全て「お仕えいたしましょう。」と答えましたが、その中でナマコだけはだまっていました。おこったアメノウズメノは小刀でその口を裂きました。そのため今でもナマコの口は裂けてていると言われています。

木花之佐久夜毘売(コノハナノサクヤヒメ)

 ある日ニニギノミコトは海岸で美しい娘にあいます。だれの娘だと問うと、大山祇神(オオヤマツミノカミ)の娘で、名を木花之佐久夜毘売(コノハナノサクヤヒメ)と言います。ひと目で好きになったニニギノミコトは、直ぐに結婚を申し込みます。娘は「わたくしにはお返事できません。父がお返事申しあげるでしょう」と言いました。そこでニニギノミコトは父のオオヤマツミに結婚を申し入れると、オオヤマツミはたいそう喜び、姉の石長比売(イワナガヒメ)を添えて、ニニギノミコトに差しだしました。

 ところが、イワナガヒメの姿はあまり美しくなかったので、ニニギノミコトは親の元に送り返してしましました。オオヤマツミはそれを残念に思って「むすめをいっしょに差し上げたのには訳があります。イワナガヒメをおそばにおかれると、ニニギノミコト様のお命は、雪が降る、風が吹いても岩のように変わらないでしょう。また、コノハナサクヤヒメをおそばに置かれると、桜の花がさきほこるように、栄えることでしょう。しかし、このようにイワナガヒメを返されては、あなた様のお命は、桜の花のように、はかないものとなってしまうことでしょう。」と申し上げました。

sakura

 こうして今に至るまで、ニニギノミコトの子孫である天皇は、神の子であるにもかかわらず、その寿命には限りがあるのだということです。

タイトルとURLをコピーしました